デコボコとした地表にカメラを近づけると、ぶくぶくと泡立つ場所があります。そしてそこから何かが溶融し、粘りのある流体となってゆっくりと低地へ流下している様子が分かります。
地獄谷の地表面は長年の火山活動による熱水変質で岩石が風化し、更に火山ガスの硫黄分を大量に含んだ砂礫や粘土鉱物など、可燃性の堆積物で厚く覆われています。そうした堆積物が燃焼する現象は時折、硫黄島や吾妻山など各地の火山ガス噴気地帯でも確認されています。ですが映像からは燃焼炎を視認することができません。その理由は、硫黄の燃焼では青い炎(都市ガス(メタン)やプロパンガスが完全燃焼した場合と同様の燃焼化学発光)が生じ、昼間の太陽光の下では視認することが難しいからです。
地表から立ち昇る白い煙は硫黄の燃焼で発生した二酸化硫黄(SO2)の気体と、それが空気中の水分と反応して生じた亜硫酸のミストです。二酸化硫黄は刺激臭が強く、目や鼻、喉などの湿った粘膜に触れると、その水分と反応して亜硫酸に変わります。これが細胞を腐食させ、炎症や痛み、呼吸困難を引き起こします。火山ガスの成分や危険性についてより詳しく知りたい場合は下記リンク先の資料をご覧下さい。
地獄谷周辺の遊歩道には火山ガス検知器が設置されています。人体に有害なレベルにまで火山ガスの濃度が上昇した場合は警報音が鳴ります。そうしたときは濡れタオルを通して呼吸するなど、ガスを吸い込まないよう工夫し速やかに退避してください。
撮影地 立山室堂平地獄谷カジヤ地獄
撮影日 2024年9月7日
撮影者 富山県 立山カルデラ砂防博物館